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2012年05月08日 ()
夜が来ていた。
それでも知らない場所に来ていることもあってなかなか寝付けなかったので、
僕は寝巻のまま海の見えるところまで散歩に出掛けることにした。

といっても、そう遠くはない。
泊まっている建物を出ると一本道が上り坂になって伸びている。
それを行けば波が打ちつける小さな崖に出れるのだ。
月明かりが白く浮かび上がらせるその道を僕は歩いていった。

その場所は、崖というよりも窪みと呼んだ方が良いかも知れない。
実際に崖というには少し低く、幅も狭い。

いつの間にか手には釣り竿が握られている。
竿先についている仕掛けは初めて使う大きいやつだった。
ちょうど親指と人差指で半円を作ったらできるくらいの大きさだ。

足元を見ると誰かが残していった餌も転がっている。
この餌もこれまで見たことがなかったが、多分貝類だろう。
半透明でオレンジ色のその餌を大きな針に通して、
とぷりとぷりと波が揺れている暗い窪みの中へと針を落とす。

月の形も水面でとぷりとぷりと揺れている。
すると、普通の当たりと違った感触が手に伝わったと思ったら、
何だかやけに竿が伸びたり縮んだりし始めた。
僕はアワアワと焦りながら慌ててそれを引っ張り上げる。

釣れたのはメジナだった。
それも今まで釣った中で一番大きなやつだ。
メジナ。

窪みから姿を現したメジナは、体を激しくくねらせて地面をびちびちと叩いている。
ヌメっと光る黒い身体に土が着いて汚れている。

「腹の柔らかいとこから刃を入れたら、思いっ切りオカモトのとこまでやるんだぜ。
 そうすれば血がキレイに抜ける。」

背中から誰かの声がして振り向くと、男がひとり立っていた。
そいつはその日の夕飯時に食堂で僕と少しばかり口論になった奴だ。

オカモト?
オカモトって何だよ。魚の内臓のどこかのことか?
とにかく、そのオカモトを切れば上手く処理できんだな。

そう思ってメジナに向き直ってみると、
さっきまでのメジナは6歳くらいの小さな男の子になっていた。

立ったままじっと動かず、男の子は真っ直ぐこちらを見据えている。
眼の黒い部分が気だるくグレイに曇っている。
その眼の上には伸びた細い髪の毛がかかっている。
肌がとても白い。

腹の柔らかいところから刃を入れて、オカモトのとこまで。
腹の柔らかいところから刃を入れて、オカモトのとこまで。

そう思いながら、僕は白い男の子の腹の柔らかそうな部分を見ていた。
男の子は曇ったグレイの眼で僕を見ていた。
食堂の男はそれをニヤニヤしながら見ていた。
月は夜の淵にいる僕らと窪みを一層明るく照らしていた。


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[2012.05.08(Tue) 12:33] くらしTrackback(0) | Comments(0)
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